住まいに愛着をもつ住まい手とつくり手を取材する「WE LOVE THIS HOUSE」。
今回訪ねたのは、大阪で5番目の人口を誇る枚方市に暮らすAさん家族(旦那さん39歳・奥さん29歳・長男4歳・長女0歳)の住まい。東海道品川宿から数えて56番目の宿場町・枚方宿の名残も少し残っています。土地探しから取り組んだ延床面積100.93㎡の一軒家には、スペースを最大限有効に使うアイデアや、お子さんの成長を考えたデザインが散りばめられていました。
記事では、土地探しからこだわり抜いた内装のお話、子育てのために取り入れたアイデア、未来の暮らし方の計画など、Aさんご夫婦と設計士の駒井陽次さんにお話を伺います。
関西地方で知らない人はいない遊園地「ひらかたパーク」のお膝元。江戸時代に栄えた宿場町の雰囲気が残るエリアやパナソニックの本社もある。
こだわり抜きたいから
全力でやってくれる地元の住宅会社を選択
Aさんご自身で土地を見つけるところから始められたんですか?
旦那さん:そうなんです。最初は吹田や豊中など北摂で探してたんですが、広さと金額が釣り合わなくて。枚方で探していたらここを見つけたので、リブランドさんに調べていただきました。
奥さん:この前に住んでいた場所も夫の実家も枚方ですし、私の実家がある京都からも近くて、結果的に枚方にして良かったです。地元で有名な遊園地『ひらかたパーク』は年間パスを持っていて、自転車で行くことができます。
旦那さん:駅前は賑やかですが、高台にあるこの辺りは閑静な住宅街。子どものことを考えて学区も調べました。治安も良く、自然も近くにあるので暮らしやすいです。
リブランドにお願いしようと思ったのはどうしてですか?
奥さん:2人とも家づくりへのこだわりがすごく強かったので、最初からハウスメーカーよりも地元の住宅会社のほうがいいなと思っていて。まずはデザインのイメージが合いそうなところをインスタグラムでかなり調べました。
旦那さん:リブランドさんは家のデザインが僕らのイメージに近くて、見学させてもらった社長の自宅の外観がすごい格好良かったのでいいなと思って。
奥さん:アットホームな雰囲気だけど、常に全力でやってくれそうな感じも良かったです。何か一つ決めるのでも納得するまで何度もやり取りさせてもらったり、かなり面倒だったと思いますが嫌な顔一つせず付き合ってくださって、とことん一緒にやってもらえました。
ご夫婦ともにアパレル業界で仕事をしていることもあり、家づくりへのこだわりは相当だったそう。設計担当の駒井さんには「SNSで見つけたイメージ画像をたくさん送っていました」と奥さん。
人が集い、変化していく
完璧すぎない家
打ち合わせではどんなお話をされたんですか?
駒井さん:まずはどんなご家族で、普段どんな生活をしているか。趣味や将来の家族の計画などもお聞きしました。その中で導き出されたのが“大切な家族や友人が集う×屋内外を楽しむ”というキーワード。奥さんがユニークな環境で育たれていたんですよね。
奥さん:うちの実家が喫茶店をやっていて、いつもいろんな人がいたんです。周りに人がいるのが当たり前の環境だったから、この家でもいろんな人を呼んでご飯を食べたりしたいなと思っていました。
駒井さん:ポイントはリビングと地続きになっているテラスと、玄関にある大きな窓。窓は開きませんが空間として外とつながっていて、外を楽しむ要素の一つになっています。最終的に図面と模型をお出しして提案させていただきました。
旦那さん:模型はとってもイメージしやすかったです!あとは将来的に子ども部屋を仕切れるようドアを2つにしてもらったり、ライフスタイルの変化に合わせて変えられる、完璧すぎない家にしてもらいました。
奥さん:もうすぐ長女が生まれるので、子どもたちが思春期になったら、それぞれの部屋を作ってあげたいですね。
玄関を開けるとテラスまでまっすぐに続く無垢材の廊下が。リブランドでは最後に模型を作って見せてくれるので、完成のイメージが湧きやすい。
外観は旦那さん、内装は奥さんの好みを反映されたそうですね。
旦那さん:外観は経年変化を楽しめる木を使うと決めていて、色味もモノトーンでかっこいいイメージにしたいと思っていました。玄関の大きな窓は駒井先生のアイデアでしたよね。提案いただいたデザインでほぼ即決だったと思います。
駒井さん:木はザラッとした質感のレッドシダーを使ってワイルドな印象に。玄関の大きい窓は光がたっぷりと入るこの家の象徴的な部分ですね。
奥さん:内観は反対にやわらかいイメージにしたくて、とにかく色味にこだわりました。リビングやテラスの床材はかなり明るめのものを選択。壁紙は白と悩んで、最終的に全面を明るめのグレーに挑戦しました。家具や飾るものをカラフルにしたかったので、いいバランスになったなと思います。
旦那さん:家にクロスのカタログがずっと置いてあったので、相当悩んでいたと思います。
駒井さん:全面グレーを選ばれるお施主さんは初めてでしたが、いいアイデアだと思いました。扉や階段を白にしたので、それがすごく映えますね。Aさん邸を参考にグレーを選ばれるお施主さんが増えましたよ。うちでは調湿や消臭に優れた漆喰クロスを標準で使っていて、四季がある日本の気候でも快適に過ごせるようになっています。
大きな窓が印象的な正面の外壁。モノトーンの切り替えは駒井さんこだわりのデザイン。内装は落ち着いたトーンの壁紙に、北欧系ブランドのカラフルな家具がよく似合う。
ハンモックからお出迎え
ユニークな仕掛け
ご夫婦それぞれ気に入っている場所はありますか?
奥さん:玄関の吹き抜けのハンモックは作ってよかったです。子どももお友達も楽しそうに遊んでいるし、夫が昼寝に使っていたりもします。
旦那さん:スペースをうまく使って遊べる場所にしたいと思っていて、話しているうちに駒井先生がアイデアを出してくださいました。
駒井さん:吹き抜けにネットのハンモックをかければ光も入るし、お子さんが遊びながら窓の外を見たり、1階とコミュニケーションもとれます。
奥さん:帰ってきた時にハンモックの上から息子が『おかえり~』と言ってくれたりしますね。
旦那さん:子どもたちが大きくなったらハンモックを取って床にしてもいいし、窓側にベンチをつくって本棚を置いてもいいなとか考えています。
子どもが大喜びするハンモック。玄関の吹き抜け部分にあり、大きな窓を眺めながら遊ぶことができる。重さは200kgまで耐えられるので、大人2人が乗っても大丈夫だ。
奥さん:リビングと地続きになっているテラスも気に入っています。パンを買ってきてピクニックしながら朝ご飯を食べたり、バーベキューをしたり。地元名物の『くわらんか花火』がばっちり見えるのはうれしかった!
旦那さん:花火は想定していなくて、たまたま見えて本当にラッキー。有料席にできるくらい(笑)。ここは高台なので周りに高い建物が建つこともなく、ずっと花火を見ることができます。
駒井さん:家の中で一番抜けのある方角にテラスを作りました。玄関から続く長い廊下の先にテラス越しの外の景色があることで、空間も広く開放的に感じます。
奥さん:玄関に入ってすぐに洗面台、そのままランドリー、バスルーム、パントリーに行ける導線もすごく便利です。子どもがドロドロになって帰ってきたら、そのまま服を洗濯してお風呂に入ってもらえます。
駒井さん:パントリーは駐車場のスペースを少し削って最大限広くしました。リビングへの導線を作ったことで、買い物したものを置いてからリビングに行くことができるようになっています。
取材時は曇りだったが普段は見晴らし抜群のテラス。リビングにも階段にもテラスからの光が入る。洗面台を玄関からすぐに置いたことで、人が来た時もお風呂やランドリー周りを見せることなく使ってもらえる。
はいはいも鬼ごっこも
子どもの能力が開くリビング
リビングにはお子さんのための仕掛けがたくさんあるそうですね。
奥さん:床材には無垢材をおすすめしていただいて。ずっと床暖房の家だったので冬が心配でしたが全然冷たくないし、やわらかくて気持ち良いみたいで息子もよく寝転んでます。
駒井さん:無垢材は熱伝導が良く、人肌に近い温度になるんですよ。リブランドは子育て世代に向けて「子どもの能力を引き出す家」を作ることに力を入れていて、無垢材を使うのもその一つ。子どもの五感を刺激してくれて、活動量が増えるんだそうです。
旦那さん:リブランドさんが薦めてくれた、はいはいをたくさんできるリビングというのも取り入れたくて。つかまれるところも極力なくしました。
駒井さん:長くはいはいをしたほうが、子どもの心肺能力や体幹が養われるという研究結果があるんですよね。大谷翔平選手もずっとはいはいをしていたそうですよ。
旦那さん:パントリーを開けると廊下とリビングがつながるので、今は息子が鬼ごっこやかくれんぼをして走り回っています。
奥さん:私がいつも実家の喫茶店で親のそばで勉強していたから、勉強机はリビングに置きたいと思っていました。息子に呼ばれたらすぐに行けるようにしたくて。
駒井さん:部屋で一人で机に向かうより親の姿が見えるほうが安心するし、やる気も高まるそうなんです。わからないところがあったり、できた喜びを一緒に感じてあげることでお子さんの自己肯定感も上がるんですよ。
奥さん:そんな効果があったとは知らなかったです!
この勉強机などは、インテリアコーディネーターと一緒に名古屋まで見に行かれたとか?
奥さん:そうなんです。空間を広く見せるために壁に取り付けられる棚や勉強机を探していて、ようやく見つけたブランドが名古屋にしかショールームがなくて。一人で見に行くつもりだったんですが、インテリアコーディネーターさんがついてきてくれたんです。
駒井さん:会社に直談判して行ったと聞いています。史上初のことだそうです(笑)。
奥さん:おかげで納得のいくものがすんなり決まりまして。本当にここまでやってくれるんだ!と感激でした。
空間をできるだけ広く見せるため、玄関からテラス、テラスからリビング方向に縦にフローリングを貼るようにリクエスト。名古屋まで見に行った勉強机は壁に取り付け式なので足元のスペースも有効活用できる。
子どもが家を大好きに
ライフスタイルと共に変化する住まい
ここで暮らし始めてから生活に変化はありましたか?
奥さん:引っ越してから外出中に息子が『おうち帰ろか』と言うようになったんです。家がすごく好きになったみたいで。
旦那さん:造りが変わっているので、子どもにとっても面白いんでしょうね。息子の友達も遊びに来たがってくれたり、『この家がいい』と言ってくれてうれしいです。
奥さん:キッチンが広くなったので、夫と一緒に料理することも増えました。人を呼びたいお家なので、友人や家族で集まって食事をすることも多いです。娘が生まれたらまた賑やかになりますね。
今後はどんな暮らしを想像していますか?
旦那さん:子ども部屋をどう仕切ろうか考えています。家具で仕切るか、カーテンのようなものを作るか。子どもが巣立ったらまた一つの部屋にしたいですしね。
駒井さん:いろんな仕切り方ができるようにつくっておきました。
旦那さん:ありがとうございます。リノベーションがしやすい家につくっていただいたので、将来子どもに家を譲ることになった時も、住みやすい家だと思います。自分たちの未来に合わせて住まいの形も変えていきたいです。
スペースをフル活用して、人が集える場所をたくさん作ったAさん邸。「家族の時間が増えてうれしいです。娘が生まれて4人家族になるのも楽しみです」
文:井上麻子
写真:田中誠
VOICE FROM HOMEBUILDER
建築を通して子どもの成長に貢献したいと思い立ったのは、自身が子育てを経験したことがきっかけでした。2人の娘を育ててみて、家が子どもの特性や能力に影響を与えることを実感したのです。そこで脳科学や心理学の観点から家づくりを研究し「子どもの能力を引き出す家」づくりに力を入れてきました。この理念を共有してくれる設計士とタッグを組んで、お施主さんの想いを叶える提案をできるように努めています。相談に来てくださる方は私の娘世代、子どもは孫世代なので、まるで父親のような気持ちになることもあります。自分は建築という分野で、子どもたちの未来をより良くしていきたいと思います。(リブランド 福家 孝さん)
株式会社リブランド
家づくりの先に
家族の未来を描く
住宅と店舗が得意な建築の専門家と、教育に携わる子どもの専門家が家づくりを実践。スタッフは子どもの才能を引き出す家づくりのセミナー又は研修を受けており、脳科学の観点から子どもの自立心・集中力・学習力・言語力を最大限に引き出す設計を考案。身体に優しい建材や、ライフプランに合わせたリフォームなど、家族の未来を支える建築を手掛ける。全国からデザイン性とヒアリング能力の高い建築家を厳選し、お施主さんの潜在意識の中にある希望を引き出す。月に一度事務所でイベントを開き、地域の大人や子どもが交流できる場づくりも積極的に行っている。